セミナーレポート

第4回 2010年1月講座

「京都の味、大阪の味」

講演中

関西は薄味料理で、大阪名物といえばきつねうどんとたこ焼き。安易に図式化されたメディア発の情報に、畑耕一郎先生は一つ一つ疑問符をつけてい く。ホンマにそうですか? と。1月13日に開かれた第4回ナカノシマ大学は、大阪・阿倍野の辻調理師専門学校の日本料理技術顧問を講師に迎えた「京都の 味、大阪の味」。笑いと辛口コメントを絶妙に配した畑先生の京阪比較文化論を、100人ほどの受講生がたっぷり味わった。

メディア的固定観念とは異なる、大阪の味。

生粋の大阪人である畑先生、まずはなにわ料理の「ほんとのところ」を検証した。大阪の食が発展した要因は大きく3つ。大阪湾や瀬戸内海の魚、河内平 野をはじめとする野菜など素材に恵まれていた▽摂津国を中心に醸造業が発達し、調味料が豊富だった▽自由な気風と「もったいない精神」の町人文化があっ た。

そんな土地柄を反映した大阪の料理といえば、船場汁に半助豆腐、ハモ皮、アラ炊き…。けれど、これらが大阪の味の代表とされることはあまりないし、 最近は出会う機会も減ってきた。「コンビニが有名にした節分の恵方巻だって、昭和の初めから海苔の販促のために大阪でやっていた。けど、知られてへんで しょ。宣伝下手なんやね」。大阪の味は単に塩分を抑えた薄味ではなく、昆布と鰹節の出会いが生んだだしの味。江戸時代まではうどん屋よりそば屋の方が多 かった…と、メディア的固定観念に異論を挟みつつ、話は京都へ。

京都の味の真髄は「工夫」にこそある。

京都の料理は、地元産素材の乏しさが逆に特徴になったと畑先生はいう。塩サバも昆布締めも、保存の必要から生まれたんやないか。大阪から三十石船で 食材は運ばれていたけど、新鮮さは比べるべくもない。だから、さまざまな工夫を施したんやろう、と。京都の「はんなり」、大阪の「ざんぐり」という対比 も、そのあたりに理由がありそうだ。もう一つ、京都で忘れてならないのは懐石料理。少しでも熱いもの、できたての料理を食べさせたいという心配りが生んだ 食文化だ。よって、京都の味は「工夫」「隣接する大阪」「懐石」などで特徴づけられるというのが畑先生の解説。

ただし…と話は続く。現代においては、歴史に根ざした地域の味は、ほとんど失われてしまった。大阪で食べても、京都でも東京でも、味を決めるのは 「気分」のみ。食文化がそんなふうに味気なくなっていく転換点は、昭和39年(1964)の東海道新幹線開通にあった、という持論で講義は締めくくられた のだった。

パネリスト
畑先生
畑耕一郎
1947年大阪府生まれ。辻調理師専門学校日本料理技術顧問を務める。同校7期生。授業では明快な理論と確かな技術で学生たちの信頼を得ているほか、「畑 せんせ」の愛称でテレビ、ラジオ、雑誌などでもおなじみの存在。料理番組「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」、CS放送「料理大学」などに出演。著書に 『プロのためのわかりやすい日本料理』(柴田書店刊)、『和風のおかず おいしい基本』(学研刊)などがあり、主婦から料理人まで幅広い支持を集めてい る。

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