セミナーレポート

第17回 2011年2月講座

「大阪から考える『移行期的混乱』」

対談/平川克美(リナックスカフェ代表取締役社長)平松邦夫(大阪市長)

政治家、財界人、経済学者たちがこぞって唱える経済成長待望論からの脱却を説いた『移行期的混乱─経済成長神話の終わり』。ナカノシマ大学2月講座は、その著者である平川克美氏を講師に招いた。日本は今なぜ「有史以来の転換期」を迎えているのか。経済成長戦略なるものが今後も必要なのか。1000年単位の時間軸から戦後社会を眺め、「日本はもう経済成長しない」という結論に達した平川氏の対話相手を務めたのは、平松邦夫大阪市長。家族や共同体の変化、行政の役割や目指すべき方向について意見を交わしながら、大阪が「移行期的混乱」を乗り切るヒントを探った。

「目に見えていることと、見えていることの意味が分かるというのは違う」。平川氏は冒頭、横尾忠則氏の不思議な絵画を例に語った。大切なのは、思い込みのバイアスを取り除き、現状を正確に把握すること。「経済成長を期待する目で見ると、大事なことを見落とします」。

鎌倉時代の日本の人口は698万人。江戸時代は3000万人で落ち着いていたが、明治以降は人口爆発ともいうべきペースで増え続けた。それがピークに達し、減少に転じたのが2006年。それは必然だったと平川氏は言う。「自由に働き、自由な生活をし、個人を確立する社会を人びとは目指した。結婚や出産が減り、日本的な家族が崩壊したのは、民主主義が進展した結果なんです」。

人口が減れば、国民の消費が大きな要因となるGDPが伸び悩むのは「自明のこと」と平川氏。「問題は成長戦略がないことではなく、成長戦略がなくてもやっていける戦略がないことが問題なのだ」と著書での持論を展開した。

これを受けて登場した平松市長が手にしていたのは「大阪市経済成長戦略案」。会場の笑いを誘ったが、「これを作ったからよしではなく、市民の自治の力を活かす仕組みを作らねばならない」とした。2人に共通するのは、政治をビジネスと同じ視点で語ることへの危惧。「大阪でも東京でも、効率やスピードといったビジネス的価値観を政治に持ち込む動きがあるが、二つはまったく別物」と平川氏が言えば、平松市長は「自治体を一つの会社と見ると過ちを犯す」と、市場原理主義的な考え方に異を唱えた。

これからの方向性として、平川氏が注目するのは家族、そして共同体の再生。「私たちはそれを嫌って解体してきたが、身近な人が支え合う社会に戻らざるを得ない」。父親を介護する経験からの実感だ。平松市長にとっても、自治の再生は繰り返し訴えているテーマ。経済の停滞は単に経済戦略の問題ではなく、社会構造全体の問題。根本から価値観を見直す必要がありそうだ。

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